『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#7 既婚者を好きになってしまいました。
今週の相談:既婚者を好きになってしまいました。彼は会社の上司なのですが、よく仕事終わりに2人で飲みに行ったりするうちに、強く惹かれるようになっていき、先日お酒のせいもあり雰囲気でどちらからともなくキスをしてしまいました…。それ以降自分の気持ちも止められなくなり、今後どうすれば良いかわからないです。ちなみに私は29歳の独身です。
いわゆる「不倫」ですね。仏教では「邪淫」と呼ばれます。生々しい響きです。
中阿含経というお経の中で「邪淫は必ず現世及び後世に悪報を受く」という記述があります。不倫をした者はこの世だけではなく来世でも悪い報いを受けますよ、という意味です。また、「自分の妻に満足することなく、遊女とつき合い、他人の妻と交わる。これは破滅への門である」(『スッタニパータ』106)ともあります。いずれもブッダの言葉です。
一方で浄土真宗の開祖である親鸞聖人はこんな言葉を残しています。
「さるべき業縁のもよほさば、いかなるふるまひもすべし」(歎異抄)
頭ではダメだと思っていても、つい誘惑に乗ってしまう。悪縁も縁なりと言いますが、めぐり合わせの妙によっては悪いことも行ってしまうという意味です。
頭では悪いとわかっている。悪いことなのだから、してはいけないとわかっている。それでもどうしてもやりたくなってしまう、やめられないという心の動きをどうすればいいのでしょう。
悪いことだとわかっていてもしてしまう、やめることができないのは、人間ですから仕方のないことです。けれど、人の行いには必ず結果があります。
赤信号では渡ってはいけない、お酒を飲んだら車の運転をしてはいけない、売っているものをお金を払わずに持ってきてはいけない。誰でもわかっていることです。それでもそれをするというのは、それなりのリスクを受け入れるということです。死ぬ気で赤信号を渡る、人を殺す覚悟で酒気帯び運転をする、刑務所に入るつもりで犯罪を犯す、そういうことです。不倫も同じです。人を好きになることに罪はありませんし、誰から裁かれる言われもありません。しかし、ひとたび不倫を犯すのなら、その結果から目をそらしてはいけません。地獄へ落ち、来世でまでも苦しみ、そこにあるのは破滅のみ。不倫の結末を心得た上で、あとは自分の心とよくよく向き合って答えを出してください。
次回は12月10日更新です。
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