#108 企業アカウントのSNS炎上問題 | Souffle(スーフル)
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コラム 2020.11.17

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#108 企業アカウントのSNS炎上問題

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

知らせたい情報は、燃やさずに伝えたい。

ほがらかSNSライフ今は何を売るにもSNSでの宣伝はマスト、漫画編集者たるもの担当作家の連載がはじまるや否や、つぶやく情報が皆無にもかかわらず「作品公式アカウント」を立ち上げるぐらいの気概があってしかるべき。
ただし作るだけ作って放置し、掲載情報すら流さない奴は死後裁きにあえ。

そう再三言ってきたし、全くSNSを使わない担当より、使う担当の方がやる気があって良い、褒美として殺す順番を後ろの方にする、もしくは一番最初に苦しまないように殺してやる、と思っていた。

だが最近、立て続けに「企業アカウントの炎上」を目の当たりにして、その考えを多少改めなければいけないと思い始めてきた。

世の中には「流れ弾」という現象があり、SNSでもそれは例外ではない。

起用したタレントが炎上、不倫、お葉っぱ様、果ては淫行などで捕まるなどして、出演作品が放送できず企業が大きなダメージを負う、というのは良くある話だ。
だが、SNSの場合、企業の方が燃えてしまい、その企業とPRコラボした絵師などの個人がついでに燃えるという逆現象が割と珍しくないのである。

おそらく「SNSを使った広報」自体が比較的新しい文化なため、ガイドラインが確立されておらず、1つ1つのつぶやきが精査されていないため、完全にSNS担当の社員一人の采配により発信されている企業も少なくないのではないだろうか。

大勢の社員が関わっているであろう、CMや広告でも「お披露目の時全員寝ていたのか」というような不適切表現で燃えてしまう世の中である。一人でやっていれば当然炎上リスクは高まる。
さらに企業アカウントというのは個人アカウントよりも世間から厳しい目で見られるため、中の人が自分の個人アカウント感覚でつぶやいてしまい炎上するというケースも多い。

漫画の作品公式アカウントも、編集部ではなく、担当個人の独断で発信されている場合が多いのだが、それは担当の名前ではなく「作品の名前」でつぶやかれているため、もし担当が不適切ツイートで燃えたら、火傷するのは作品とその作者である自分だったりするのである。

それだったら自分の名前で自分の作品を宣伝し、自分で作品もろとも燃えた方がまだ納得がいく。

逆に言えばSNSをやらない担当は「炎上」という命取りになりかねない現象が起こるリスクを0%に抑えている、とも言える。
事故はどれだけ未然に防ぐかが大事なので、それはそれで正しい判断と言えなくもない。

ただ、せっかく無料で使える宣伝ツールをを使わないというのももったいないし、誰だっていつ社長(82)に「お前若い(42)だからツイっなんたらでうちの製品(なんかのネジ)宣伝すんべ」と言われて「企業アカの中の人」に任命されるかわからない。

もし個人ではなく、何かの名前を背負ってSNSをやる場合、一番大事なのは「別に面白くなくて良い」という点である。

企業アカウントの炎上を見ると、面白い企業アカウントにしようとするあまり初弾からド差別ギャグを繰り出してしまうケースもあるが、最初はウケていたギャグがだんだん過激になっていき、ある日一線を越えて炎上という場合が多い、

企業アカウントにとって一番重要なのは企業イメージに「マイナス」を出さない事である、マイナスリスクがある面白いつぶやきでプラスを出そうとするぐらいなら、毒にも薬にもならない虚無のつぶやきをした方がまだマシなのだ。

また炎上する企業アカには炎上する以前から「片鱗」が見えている場合も多い。

企業アカウントを持っている会社の責任者や管理者の方は若手(42)一人に全てを任せず、たまに全社員で「これはヤバくないか」チェックしてみた方がいい。

次回は11月24日更新。そしてこの連載の単行本化が決定!2021年2月発売予定です。

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OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

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