誹謗中傷の慰謝料| ほがらかSNSライフ| カレー沢薫| Souffle(スーフル)
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コラム 2021.12.28

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#166 誹謗中傷の慰謝料

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

最新話更新!

『ほがらかSNSライフ』先日からSNSの誹謗中傷についての訴訟や訴えの話をしているが、それをしたりされたりすることでどのようなことが起こるのだろうか。

まず、誹謗中傷をやめることと、そしてそれに対する損害賠償や慰謝料を請求することができる。
ちなみに必ずしも即裁判というわけではなく、まずこちらの要求を提示し相手がこちらの求めに応じなかった場合「ほんならお上に決めてもらいまっしょい」ということで裁判に突入していき、相手が応じれば「示談成立」ということになるらしい。

誹謗中傷の慰謝料というのは数十万から多くて100万ぐらいが相場だそうだ。
しかし請求するだけならそれ以上にふっかけることはいくらでも可能だという。

当然相手は「なぜ貴様のハゲ頭を愚弄しただけでこんな大金を払わなければいけないのか」とゴネるだろう。
そうなれば「せやったらお天道様の下で裁いてもらいまひょか、ハゲ頭だけに」と、特に何も上手くないことを言って「法廷で会おう」ということになる。

「貴様には示談すら生ぬるい」という作画原哲夫状態の時は相手がいくら示談でお願いしますと言っても「次回:裁判所現地集合」を強行することもできる。

しかし裁判をやった方が相手から搾り取れるかというとそんなことはない、むしろ裁判だと「このぐらいが妥当でっしゃろ」という相場通りになるか「そうは言うても君実際ハゲとるしね」と、自分よりさらに太陽拳な裁判官に納得のいかない判決を出されてしまうかもしれないし、最悪負けることさえある。

つまり金銭的ダメージを与えたいなら示談の方が多くとれる場合が多く、手間もかからない。
相手がこちらは悪くないし一銭も払わないうなら裁判やむなしだが、相手がこちらの要求を飲むというなら示談の方が利益は多い。

しかしそれでも作画原哲夫を崩さず、ネームを載せたときの冨樫義博になるつもりは一切ないという場合もある。
なぜコストと時間をかけてまで裁判に持ち込むかというと、相手を金銭ではなく社会的にぶっ殺したいからだ。
なぜ相手が相場より高い示談にするかというと、裁判になって事が公になるのが嫌だからである。
裁判になると、家族はもちろん職場にもバレやすく、日本は公開裁判なので、家庭では良き父、職場では頼れる上司が、SNSでアイドルに卑猥なメッセージを5678回送った事が判明し、さらにその内容が証拠として出され、皆の知るところになってしまうかもしれないからである。
金銭的なものであればその場のマイナスだけで済むが、社会的地位の失墜というのは下手をすれば一生ついて回る。
よって社会的地位のある人間は相場の何倍払ってでも示談で済まそうとするのだ。

つまり、訴訟か訴えをすることで、相手に金銭的、もしくは社会的に大ダメージを与える事ができる。
逆に軽い気持ちでSNSで誹謗中傷したことにより金も地位も失う羽目になるかもしれない、ということだ。

そして「無敵の人」がなぜ無敵かというと、失う金も地位もないため、裁判という切り札も斬鉄剣における蒟蒻のように一切ダメージが通らないからであり、むしろやればやるほど、こちらの金や時間が失われていく。

つまり、SNSで誹謗中傷したければ、金も地位も捨て、無敵になってからやればいい。

誹謗中傷のためにそこまでやりたくないと思うだろうが、それが正しい。
誹謗中傷というのは大事な金や地位を捨ててまで大の大人がやることではないのである。

次回は1月4日更新です。

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OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

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