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コラム 2023.11.21

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#258 Xが出会い系アプリになったら

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

最新話更新!

『ほがらかSNSライフ』イーロンマスクが旧Twitterを買収してから1年、だそうだ。

まず1年しか経っていないということに驚きだ。
イーロンが社員を一斉解雇、そこから「TLをゴチャゴチャにするのが私の仕事ニキ」の登場、Twitter Japanが「X JAPAN」になるという小ネタが実現し、青い鳥が更迭、その代わりにイーロンを磔にすることで完成する遊び心溢れる「X」字のロゴが降臨、APIという謎の物質が制限されたことで丸1日Xが使えなくなったこともあったし、その間に5回は「X完全有料化」のニュースがトレンドに上がり、今のところ完全有料化はしていない。

これらのことがとても1年で起こったとは思えない。
逆に言えば、イーロンは我々の詰め替えを渋り続けたシャンプーの如き人生の濃度を上げてくれた存在と言える。
時間の経ち方は平等だが、その密度は人によってまるで違うということをイーロンは思い知らせてくれたのだ。

さらに、それで出尽くしたということはなく、さらなるX改革の意気込みをオンライン会議上で語ったという。

その様子を見ていた証言者によると「嫌になるほどいくつも進められているXの機能や仕様の変更に関することだった」そうである。

イーロンの発言に関するニュースを見るたびに「日本語訳が嫌になっている人がいるな」と感じるが、今回もかなり嫌になっているご様子である。

だが、イーロンはXでまだまだやりたいことがあるし、それがユーザーにとって全然歓迎できそうにないことだらけだということだけは伝わる。
私が、日本語を話せるはずなのに、何故か他人とコミュニケーションが取れないように、文法的に正しいことと、ハートが伝わるかどうかはあまり関係がないということが良くわかる。

その、イーロンが嫌になるほどいくつも進めているXの機能や仕様の一つとして特に注目を集めているのが「Xを本格的な出会い系アプリ」にするという宣言である。

確かにもはや昨今SNSは「出会いの主流」と言って良い。
むしろ、出会い系を使うことにより出会いたい人間同士がマッチングできるため「多肉植物にしか興味がない人を一生懸命口説いていた」など、お互い時間の無駄を省くことができる。

もちろん、イーロンに言われるまでもなく、Xで出会い、友人になったという例はいくらでもあるだろう。

しかし、イーロンの言う「出会い」が「多肉友メン募」であればいいのだが「真剣なパートナー募集」だったら様子が一変してくる。

Xは表に出せない物を出すために使っている者が多いため、そこでパートナーを探すというのはハプニングバーで結婚相手を探すに等しいチャレンジ企画とも言える。

しかし、逆に言えば、真剣な出会いを謳うマッチングアプリはお互いおキャット様をかぶりあっており、会ってみたら全然違ったし、むしろ結婚後にすごい性癖を繰りだしてきた、ということもあるのかもしれない。

対してXはおキャット様を脱いだ状態で出会える場所と言える。
つまり、Xですら礼儀正しい人間はあらゆる場所で礼儀正しく、飲食店の店員に死ぬほど横柄など、出会ってから嫌な本性に気づくという事故率が低い可能性はある。

そういう意味で、X出会い系化は悪いアイデアではない気がする。

何よりXをやっていればワンチャンイーロンと出会える。
こんな刺激的な出会いの可能性を持ったSNSは、イーロンがFacebookを始めない限りは今のところないのである。

次回は11月28日更新です。

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OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

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