Xはガンジス川から神聖さを奪ったかのような存在であり、特に「おすすめ欄」は台風後の東京湾より汚い、と幾度となく主張してきたし、その度に「私のおすすめ欄はカワイイ動物とツルバニアファミリーしか表示されない」という人が現れ、「結局おすすめ欄はアカウント主の心を映し出す鏡」という結論になっていた。
つまり「Xは脳細胞を死滅させる」ことだけは確かということだ。
1日62時間Xを見続けた結果脳が破壊され、同じ話を何回もするようになってしまった。
そして毎回「おすすめ欄は浄化できる」の言葉を信じ、他人の猫画像をいいねやRPして改善に至ることなく、今日も私のおすすめ欄には、サレ妻とビジネスサレ妻しかいない。
もはやXは私の深層心理を反映しており、私が本当に求めているのはカワイイ動物ではなく、不倫されている人間なのかと、己のアイデンティティーが揺らぐ事態になってきたが、そんな不変のドブ川にも最近変化があった。
詳細は省くが、我が家に「子猫」がやってくる、というとんでもない事件が起こり、さらにそれが3日後にいなくなるという大事件が起きたのだ。
別に没したとか、行方不明になったわけではなく、当初から3日だけの預かり予定で、今は別の人間の家で元気らしい。
だが3日の間に、すっかり自分んちの猫のつもりになってしまったため、それがいなくなったことを未だに受け入れることができない。
当然、猫がいる間写真や動画を撮りまくってXに上げたし、なんだったらいなくなった今でも上げている。
子猫からしたら、3日つきあっただけの男が、今も「俺の彼女」と言ってSNSに写真を上げ続けているかのような恐怖だろうが、そうでもしないとやりきれないのだ。
しかし、自分が猫の写真を投稿した結果、あれだけ断固として人間同士のケンカしか流してこなかったおすすめ欄が、猫、しかも子猫の画像を流すようになったのだ。
池の水全部抜いたどころの騒ぎではない浄化ぶりだ。ジャンボタニシを撒いた田んぼのように、子猫の画像を数枚流しただけで、人間が駆逐された。
つまり、他人の猫をいいねするのではなく、自分で猫を投稿した方が効果的ということだ。
これからも猫を流しまくっておすすめ欄を東京湾からギャノ・クリスタレスにしていきたいのだが、何せもう、うちに猫はいないし、3日の間に撮影した画像には限りがある。
よって猫が去ってから数週間経った今、私のおすすめ欄には人間が戻ってきて元のドブ川に戻りつつある。
他人の猫でいいから流したいところだが、それではやっていることが動物の無断転載アカウントと同じである。
しかし、この件でSNSでも「虎の威を借りる狐」では意味がないと痛感した。
自分ので意見を言うのが怖いから、自分と似た意見のつぶやきをRPして自分の意見としてしまうことがあるが、結局それは何の意思表明にもなっておらず、むしろ自分の言葉で意見一つ言うことができない卑怯者であると喧伝しているようなものだ。
どれだけ偉人の名言を羅列してフォロワー数を増やそうと、自分が偉人になる日は永遠に訪れないのである。
自分のアカウントに自分の猫写真を投稿できるのは、日頃おキャット様のお世話に従事している人間の特権である。
子猫を失った私は、それらの特権階級が落とす猫写真を這いつくばって拾うしかない。
そんな砂だらけの服を着ている奴のおすすめ欄が、キレイなはずはないのである。
次回は10月29日更新です。
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