#307 あえて言わない | Souffle(スーフル)
公式Twitter 公式Instagram RSS
Souffle(スーフル) Souffle(スーフル) 息、できてる?
コラム 2024.11.19

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#307 あえて言わない

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

最新話更新!

『ほがらかSNSライフ』Xを見ていると国民のほぼ全員が投票に行っているように見えるが、実際の投票率は50%程度だという。

あれだけX民が総出で見守ったワニの生死でさえ、1歩外に出ると誰も気にしていなかったように、Xと現世は全くの別次元である。

しかし、X民の大半が選挙に行き、投票率50%の内49%がX民で残りは80歳以上の老人というわけでもないだろうし、そうだったら今頃日本はイーロンの植民地になっている。

もしかしたら、X民の投票率も現世と同じ50%という可能性すらある。

何故なら「選挙行ってきた」と投稿する人はいても、「選挙行かなかった」とわざわざ投稿する人はそんなにいない気がするからだ。

老に席を譲ったなどの善行を行えば、せっかくだからSNSに自分のジャスティスぶりを書きたくなるが、逆に「優先席のババアをどかせて座った上、足を210度開脚し両隣のジジイの肩身を物理的に狭くした」というギルティは書きこまないだろう。

しかし、そこまでの確信犯であれば自らの悪行を知らしめようとするような気もする。

一番書き込まないのは「目の前に老が0距離で立っていたが死んだふりでやりすごした」という、アクションを起こさなかった勢なのかもしれない。

選挙に行かなかったということは「何もしない日曜」と同義であり、わざわざ書くことでもない。

それにやらなかったこと自体を後ろめたく感じることもあるし、下手にやったよりも責められることすらある。

このように「あえて言わない人」がどれだけ潜伏しているかわからないため、水面に出てきている声が多数派ということもないのだ。

しかし、声を出さなかった結果、出した奴の意見が多数派と見なされ採用されてしまうこともある。

そもそも選挙自体、投票に行った50%という半数だけの意見が「国民の総意」と見なされているのだ。

それは困るというのであればダルくても声を出すか動くかしかない。

それと同じように、Xで何かある度に「こんなとこにいられるか!」とXを去る人間が多数現れているような気がするのに、未だに人から人が消えないのは、声を出すのはXから去るというアクションを起こす人たちだけで、引き続き使う人はわざわざそんな宣言などせずに使い続けているからだろう。

確かに移転する旨は伝える必要はあるが、同じ場所にいる宣言は不要である。

つまり、私がX離脱者が多数出た時に、いちいち「俺は今までどおりここに居座らせてもらうぜ」とでかい声で言うのは、不要どころか「今日ババアに席を譲らなかったぜ」と得意げに書き込むぐらい恥ずかしいことなのかもしれない。

次回、Xから大量離脱が起きた時は「黙っている」ことに挑戦したいが、多分また「俺はここにいる」と言っている自分の姿が見える。

黙っていることが悪な場合もあるが、「沈黙は金」というのも真実である。

次回は11月26日更新です。

今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!

前の回を読む

コミックスを購入

国家の猫ムラヤマ

カレー沢薫 既刊コミックス『国家の猫ムラヤマ』

紙書籍

2XXX年、人間は絶滅しかけ、どうぶつ達が政権を握るようになった日本。投票率0%で続投決定のムラヤマ総理大臣(ツシマヤマネコ)が国を統治する!! 日本の問題点をあぶり出して燃やす、社会風刺行政ギャグ!! 時事ネタひとコマ漫画「文化庁チンアナゴ長官」も同時収録!!

他の回を読む

OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

ご感想フォーム


    『一億総SNS時代の戦略』の紙書籍を購入