某男性アイドルグループのメンバー二人が同時期に一般女性との結婚を発表したことをニュースサイトが「某グループの〇〇と××が結婚発表」とあたかも男性メンバー同士が現法の枠を超えて電撃結婚したかのような見出しで発表したように、「一部を切り取り誤解させて拡散を狙う」というのは、ネット記事ではよくある手法であり、何ならネット以前にウエストスポさんとかがあみ出していた古典とも言える。
これは主に有名人の動向に使われがちだが、我々漫画家も同様のことをされることがある。
漫画は1巻だけでも100ページ以上あるのだが、その中から露悪的なコマだけを切り取りSNSに投稿され、その内容が誤解されて広まるという現象だ。
たとえテーマが「男女平等」だったとしても、「男にはそこら辺の草でも食わせておけ」という1コマだけが切り取られネットで拡散されると、多くの人に「なんて差別的な漫画だ」と思われてしまうのだ。
1コマだけ切り抜いても主題が全くブレない「翔んで埼玉」はすごい、という話なのだが、大半の漫画は1コマや数ページの切り抜きだけで全容を説明するのは不可能であり、誤解が生じやすくなる。
全体を読まずに数コマだけを見て批判している人間を見ると、描いてる側として「全部読んでから言ってくれ」と思うのだが、こっちも漫画を宣伝する際に、刺激的なことを言っているコマやエロ漫画ではないのにエロいコマを切り抜いて、読者に興味を持たせる手法を使っていたりするので、許可なく切り抜きに使われている点自体はおいておいて、手法自体は責めきれないところがある。
何より私自身も、SNSに流れてくる断片だけを見て重厚な百合漫画を、「どうせ悪役令嬢がもっと高スペックな男に溺愛されて元婚約者と浮気相手の女に復讐する漫画だろう」と誤解してしまっている可能性は大いにあるし、それ自体が復讐漫画に対する偏見が入っている。
しかし、SNSに流れてくる情報の真偽を全て確かめるのは無理であり、流れてくる漫画広告の内容を全て読んで確認しようと思ったら普通に破産する。
「全部読んでから言ってくれ」というこちらの言い分も、「何故そんなことに俺様の貴重な時間と金を使わなければいけないのか」と言われたらそれまでであり、だからこそ貴重な時間と金を使ってくれる読者には足を向けられないのだ。
しかし、「全部読んでから言ってくれ」とは言えないが、「言うならせめて読んでからの方がいいのでは」とは思う。
断片だけ見て誤解するのも誤解のままになるのも、情報過多な上、発信元が意図的に誤解させようとしている現在仕方がないが、内容を確かめずにその誤解をさらに広める発言をしてしまうのは過失であり、よくわかってないのに発言していることを批判される側になってしまったりもする。
SNSをやっていると怒りの沸点が2度ぐらいになり、「怒りを感じた瞬間には怒り終わっている」というプロシュート仕草をしがちだし、「思った瞬間、行動が終わっている」というのも、一見カッコいいが、よく考えればこれは暗殺を生業にしている人の心得である。
一般人は、SNSに流れてきた断片情報を見て怒りを感じたと同時に怒るのではなく、これは自分が怒っていいことなのか、怒ったことで逆に怒られないか、みみっちく左右を確認してから怒った方が身のためである。
次回は5月13日更新です。
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