『ムーちゃん通信』赤沼美里 発達障害と自閉症がもっと身近になるコラム!
ムーちゃん通信#36「抜毛症ってなあに?」

「抜毛症」の原因はストレス? どうしたらやめられるのでしょうか?
毛髪を抜く癖がやめられない病気
抜毛症とは、毛髪を頻繁に抜いてしまう精神疾患です。抜毛症には2つのタイプがあり、ひとつは毛を抜く時の感覚を求める「焦点化型」、もうひとつは無意識で抜いてしまう「自動化型」です。どちらのタイプでも、やめたいのに抜きたい気持ちが止められず、たいへんな苦痛を伴います。
髪の毛だけでなく、まつげや陰毛など、体のあらゆる部分の毛が抜毛の対象となります。毛がなくなって外出が難しくなったり、やめられない自分に罪悪感を抱いたりして、日常生活に支障が生じてしまう人も珍しくありません。

発症平均年齢は、10代前半の思春期前後の子どもたちです。見た目の問題からか女性の受診率が高いことも関係し、9:1の割合で圧倒的に女性が多く発症します(2020年9月現在)。なお、思春期以前に受診する患児に、男女差はありません。
【無理にやめさせないで】
抜毛症の原因には、学校や家庭、友人関係などの問題や、環境の変化といったストレスが潜んでいます。このため、環境の改善と同時に、認知行動療法を中心にした治療が行われ、必要に応じて薬物療法も併用されます。
無理やりやめさせてはいけません。ストレスとなる環境が変わらない限り、他の症状が出たり、症状が悪化したりするからです。自分や家族だけで治そうとせず、精神科や皮膚科を受診してみてくださいね。
【発達障害と併発しやすい】
発達障害がある人は、抜毛症を発症しやすいと言われています。発達障害の人は苦手なことも多く、日常生活でストレスを抱えやすい環境にあるんですね。みんなが当たり前のようにできることができないために、不安に陥りやすく、抜毛症を含む精神疾患を発症する人も少なくありません。
ムーちゃんは感覚遊びの一環かも
自閉症や知的障害のある人は、髪の毛を抜く、頭を叩く、自分の体を噛むといった「自傷行為」が、定型発達の人よりも多いことがわかっています。暇なときに感覚を求めたり、嫌なことから逃れたりしたいときに、自分を傷つけることで感覚刺激を作り出します。
ムーちゃんは髪の毛をバッサリ切られてしまいましたね。それまでは、ヘアスタイルとともに長い髪のサラサラとした感覚を楽しんでいたようにも見えます。しかし髪を切ったことで、それもかないません。髪の毛をかきあげようと自分の髪の毛を触っているうちに、ムーちゃんは髪を抜いて捨てる感覚に気づいてしまったのかもしれません。また、自閉症のある子は、こだわりや繰り返し行動を好むことから、髪の毛を抜く行為が、自閉症の特性と紐付いてしまったことも考えられます。

【参考文献】
・朝倉知香・小笠原恵/著『発達障害児の示す自傷行動と活動レパートリーとの関係性について』東京学芸大学紀要1部門56(2005)
・有園正俊/著、上島国利/監修『こころのクスリBOOKS よくわかる脅迫症』(主婦の友社、2017)
・武井智昭/著『特集 小児の心身症~いま改めて心身相関を考える~ 各論:診療の実際 小児の抜毛症とその対応』小児内科55巻6号(東京医学社、2023)
・松田慶子/著、上島国利/監修『本人も家族もラクになる 強迫症がわかる本 ココロの健康シリーズ』 (翔泳社、2017)
今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!
コミックスを購入








他の回を読む
ご感想フォーム
人気記事




