『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?
#115 ツイッターでヤジが起きやすい理由
2月16日単行本、発売です。よろしくお願いいたします。
まだコロナのニュースが今よりホットで安倍総理大臣だったころ、一度だけテレビで総理の緊急記者会見を見たことがある。
別に晋三の登場を全裸待機していたわけではなく、夕食時たまたまテレビをつけたら晋三と過ごす夕べになっただけである。
会見は安倍元総理がボンヤリしたことを言った後、記者が質問をするという形式であった。
しかし、総理の言うことも霧みたいだったが記者の質問も霞のようであり、全体的に白昼夢のような仕上がりであった。
私はよく「書くものに内容がない、読んだ瞬間忘れる」というお褒めの言葉をいただくのだが、この記者会見には敗北を認めざるを得ない、さすが事情聴取を受けても一国の長、一介の民草が勝てる相手ではなかった。
しかし、総理がフワっとしたことを言うのは想定内だったが、記者の質問まではんなりするとは思わなかった。
最近の記者会見は「感染者全員射殺」みたいな、いかにツイッターでバズる文言を相手から引き出すかの勝負になってきている。
よって本人よりも「記者の質問がクソすぎる」と話題になることもしばしばであり、相手からスパイシーなことを言わせるためにケンカを売りにいくような記者もいる。
ではこの会見でなぜ晋三のハートに火をつけようとする記者が現れなかったかというと、そもそも消化記者会見だった、という説もあるが「場の雰囲気」が関係しているのではないかと思う。
その記者会見は、ソーシャルディスタンスを取るために、記者が2メートルの感覚をあけて座っている状態であり、そもそも記者の人数も少ない。
また質問は挙手制、そして質問前に会社名と所属と名前を言わなければいけないという形式であった。
もしクソ質問をしてしまったら、まず会社のイメージがダウンし、自分の身元もばっちり割れてしまう仕様である。
つまり最初から安倍元総理が「絶対零度(何を言ってもスベる空間)」のスタンドを発動させていたと思われる、やはり起訴されかけても一国の長、スタンドを使うぐらい造作はないようだ。
逆に、相手を年男が奪いあう玉のように記者がひしめき合いながら囲んで、皆が矢継ぎ早に質問を飛ばし、カメラのフラッシュでディスコ状態の会見では挑発的な質問が出てきやすい。
ツイッターで、誹謗中傷やケンカが多いのは、常にこのディスコ状態だからなのかもしれない。
まず名前と所属は明かさず発言できる。
そして1リツイート3いいねしかされていないつぶやきにケンカを売るのは度胸がいるが、万RTされてすでにリプがたくさんついているようなつぶやきになら、どさくさに紛れて誹謗中傷や、卑猥な言葉を投げつけやすい。
「野次」と言われるように、人は群衆の中に紛れていると、強気な発言が出来るようになってしまうのだ。
しかし、最近は相手が本気になれば、群衆の中から引っ張り出され、真名解放の上訴えられるというケースも増えてきている。
最初から「週刊シコリティの今日のおヌキコーナー担当、舐地蔵です」と名乗って言えないようなことは他人に言うべきではない、ということだ。
次回は1月12日更新です。
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