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コラム 2024.01.22

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』清水公一 「がん」でかかるお金のリアルがわかる!

#4 がん保険について

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』清水公一

肺がんサバイバーの社会保険労務士・清水公一さんによる、「がん」についてのお金のコラム。

皆さん、がん保険には入っていますか?
僕はがんになる前にがん保険に入っていて、闘病生活をする上でかなりの助けになりました。実は、僕の前職は保険会社で営業をしておりました。保険というのは不幸の宝くじみたいなもので、不幸の宝くじに当たった場合(病気になったり、亡くなったりしたとき)に、加入者みんなで負担をしようというものです。もちろん保険料総額のほうが給付金総額より多く、保険会社の利益も基本的には保険料の中から得ています。なので、確率的には保険加入者は総じて損をしていることになります。しかし、人生を考えると、ライフプランの中で保険に加入したほうがいい時期というのもあると思っています。ただし、保険商品の中には保険会社の利益率が高い商品とそうでない商品があります。なかなかその見極めは難しいですよね。加入する側としては、ライフプランの中で必要な保険商品の中で加入者にメリットがある商品を選びたいですよね。今回のコラムでは、がん保険を中心として、保険について僕の個人的な考えについて書きたいと思います。

まず、僕が必要と思っている保険は、子育てをしている家庭の大黒柱の人の死亡保険と働けなくなった場合の収入保障保険です。目的は不幸の宝くじが当たってしまった場合の生活、育児のための資金確保です。そのような保険の場合、積立タイプの保険と掛け捨てタイプがあると思います。積立タイプの保険は積立部分の管理や運用で保険会社に手数料を取られます。実際にいくらがその手数料になっているかは加入者には見えないですが、それなりに保険会社に手数料を払っていると思われます。もし、積立貯蓄をしたいのであれば、手数料をかけずに、税制上優遇されたつみたてNISAやiDeCoなどで貯蓄したほうがいいというのが僕の意見です。NISAは今年の1月から年間の投資枠が大幅に増えましたね。貯蓄をするなら証券会社に口座を開設して、NISAやiDeCoのインデックス投資信託で貯蓄をするべきだと僕は思っております。手数料もほぼかからないし、税制上優遇されています。死亡保険と収入保障は掛け捨てで必要な時期までに必要な金額を保険金として得られるようにするといいと思います。

絶対にがん保険には入ったほうがいい人

がん保険に入るべきかという問題ですが、絶対に入ったほうがいい人がいます。それは遺伝的にがんになりやすい人です。がんになった人のおよそ5〜10%が遺伝的要因だと言われております。遺伝性腫瘍の場合、がん遺伝子(細胞を増やす役割をもつ遺伝子)やがん抑制遺伝子(細胞が増えるのを抑える役割をもつ遺伝子)の生まれつきの変化が原因です。よく、がん家系という言葉が使われますが、いまや2人に1人ががんになる時代なので、家族や親戚にがんになった人がいるほうが普通なので、ただ家族や親戚にがんになった人がいることだけをもって遺伝性腫瘍ということにはなりません。厳密には遺伝カウンセリング、遺伝子検査を実施して遺伝的にがんになりやすいと医学的に判明します。この検査を実施するかどうかは、父方または母方の家系どちらかに若くしてがんになった人が多数いたり、異なる臓器や同じ臓器に若くして何度もがんができた、などの状況から遺伝性腫瘍の疑いがあるなら、きちんとした病院の遺伝外来などを受診し、遺伝子検査を実施するといいと思います。この遺伝子検査は血液で検査できる遺伝性腫瘍も多いです。遺伝子検査で遺伝的にがんになりやすいとわかった人は、がん保険に絶対に入るべきです。ちなみに、いまのところ、遺伝的にがんになりやすいことが医学的にわかったとしても、その時点でがんになっていなければ問題なく普通の人と同じがん保険に加入できます。遺伝的にがんになりやすいことを保険会社に告知する義務はないです。

がん保険に入るべきか

がんになる人の9割以上は遺伝的腫瘍ではないことになります。その場合、がん保険に加入するかは、個人の価値観次第ということになります。僕の個人的な意見は、がん保険は入ったほうがいいと思っています。理由としては、がんになった場合(不幸の宝くじに当たった場合)のリターンがそれなりにあることと、継続して治療費が必要になったり、仕事を休まざるを得ない状況になる可能性があるからです。他の病気でも、継続して治療費が必要になったり、仕事を休まざるを得ないこともあるかもしれませんが、僕は医療保険は必要ないと思っているタイプの人間です。理由は医療保険の保険料を回収することが、病気になっても難しいと感じているからと、医療保険が保険会社の収益頭になっていることが多いと感じているからです。だったら、その保険料の分を貯蓄したほうがいいと思います。基本的には保険会社が儲かる商品=加入者が損をしていることがほとんどです。でも、簡単に保険料の分を貯蓄にまわすと言いましたが、なかなかできることではないと思うので、そこはひとりひとりの価値観次第だと思います。

どんながん保険に入るべきか

では、がん保険への加入を決めたとして、どのような商品に入るのがいいのでしょうか?

ポイント1:掛け捨てタイプor貯蓄タイプ

掛け捨て(解約返戻金がない)タイプがいいと思います。貯蓄するなら手数料がかからない他の手段(つみたてNISAなど)で上手に貯蓄するのがいいと思います。

ポイント2:診断給付金

診断給付金がある保険かどうか。個人的には診断給付金がある保険がいいと思います。やはり、がんと診断されるととても精神的に落ち込むし、今後、治療費がいくらかかるのだろうと心配になります。診断給付金としてまとまった保険金が入ってくれば、金銭面での不安が軽減します。
診断給付金がある保険だとしたら、もらえる回数が重要です。大きく分けると1回のみと複数回もらえる保険に分かれると思います。複数回の場合は2年に1回などの条件がある場合がほとんどです。あとは初発のみで再発は含まない商品(原発1回のみの診断給付金)か再発も含めて複数回もらえる商品かどうかなども詳しく調べる必要があります。がんで一番困るのは再発です。保険もその再発時に給付されるかが大事になります。
もうひとつ、上皮内新生物を診断給付金の対象とするかどうかもポイントのひとつです。上皮内新生物とは、がん細胞が臓器の表面や管状の臓器の内側をおおっている上皮までにとどまっているがんのことです。がんが上皮と間質を隔てる基底膜を破って浸潤しておらず、切除できれば再発の可能性がほとんどないものです。大腸内視鏡でポリープをとってそれががん化しているものなどが上皮内新生物に該当します。これも保険商品によって対象とする商品とそうでない商品があります。できれば、上皮内新生物も診断給付金の対象となっている商品がいいと思います。

ポイント3:通院治療の保障

近年、がん治療は入院期間が短くなってきています。
がんが見つかり手術をする場合、入院して手術となることがほとんどですが、そのための入院期間は10日未満のことも多いです。低侵襲で傷口が小さい術式が普及しており、回復が早いためです。もちろん、術後合併症などがあれば、入院が長期間になる可能性はありますが、そのようなケースは少ないです。
薬物療法(抗がん剤)を実施する場合は初回投与時のみ1週間ほどの入院で、2回目以降は通院になる場合が多いです。薬物療法は人により副作用の出かたが違うので、重篤な副作用が出ても対処できるように初回投与時のみ入院としている病院が多いです。2回目以降は副作用が出るリスクも減るので通院治療となります。よって抗がん剤治療を長期間実施していたとしても、基本的には通院ということになります。
放射線治療についても通院で実施している病院がほとんどです。放射線治療は少ない線量を複数回照射する治療が多いです。例えば、30回に分割照射する治療だと、2か月ぐらい毎日通院にて治療をします。
このように近年のがん治療は通院がメインであることがわかると思います。がん保険に関しても、入院治療の給付は付いている保険がほとんどで、日額◯万円といった感じでアピールしていると思いますが、通院による治療の給付をどの程度保障しているかがより重要なポイントとなってきます。実際に通院治療をすると、それだけで時間がかかり、治療の日は仕事を休まざる得ないこともあると思うので、通院給付は大事です。
ただ、治療を入院でするか通院でするかは病院や主治医の先生の判断、患者さんの状態によって差があり、2回目以降の抗がん剤を入院でする場合や、放射線治療を入院でする場合もあります。あとは患者さんの自宅が遠いなどの理由で入院を希望した場合、その希望を受け入れてくれる病院(主治医)もあります。入院のほうが保険金がたくさんもらえるからという理由ではなかなか認めてもらえないかもしれませんが、主治医に相談してもいいのかなっと思います。

ポイント4:定期保険or終身保険

定期保険とは10年間など、保障期間が決まっている商品で、その保障期間を過ぎると更新され、保険料が高くなります(保障期間の間にがんになった場合、保険料は高くなりますが、次回の更新はできます)。終身保険とは保障期間が一生涯であり、保険料は加入したときから変わらない保険商品です。
がん保険の場合、終身保険の商品が多いです。がんになるリスクは年齢により変わってきます。特に男性の場合、60代以降でがんに罹患する可能性が高くなり、定期保険の場合、50歳を超えると保険料がかなり高くなり、保険料の支払いにかなりの負担が生じてきます。保険というのは必要なときに必要な保障が必要であり、60代以降の保障はしっかりしていたほうが安心です。そのため、60歳以降でも保険料の負担を感じない終身保険がいいと思います。

ポイント5:保険料免除特約

がんになった以後の保険料は納めなくてもいい特約です。がんになった以後の保険料が免除になるとその分だけ経済的負担は減るので、この特約のあるに越したことはないです。ただし保険料がけっこう上がるので、悩ましいところです。

ポイント6:先進医療特約

先進医療とは厚生労働大臣が承認した先進性の高い高度の医療技術で保険診療になってないものです。先進医療は公的医療保険の対象にするかどうか評価している治療や療養、技術であり、実施施設も厚生労働大臣が認めた施設で実施することになります。がん治療だと重粒子線治療や陽子線治療の多くは先進医療に該当します。こちらが先進医療の一覧になります。
保険料も数百円と安いので先進医療特約は付けておいてもいいと思いますが、実際には先進医療特約を使って重粒子線治療や陽子線治療をすることはかなりハードルが高いです。先進医療として認められているのは、基本的には根治的治療が可能なものです。転移を認める場合には先進医療として認められず、重粒子線や陽子線治療を先進医療として受けることができません。あと、保険適用されている放射線治療でも重粒子線や陽子線治療と遜色ない効果が得られる場合が多く、先進医療の対象疾患であっても、先進医療を実施している医療施設を紹介されることは稀だと思います。僕の知り合いで、先進医療特約を使って重粒子線や陽子線治療をしたという人を聞いたことがないので、実際に利用している人は少ないと思います。それに保険料が月額数百円と安いことも、実際に先進医療を利用している人が少ないことを表していると思います。多くの人が300万円の重粒子線治療や陽子線治療を先進医療として使って保険会社に請求していたら、この保険料にはならないはずです。
保険会社としては先進医療特約でいい治療が受けられるとアピールをしておりますが、皆がみんな先進医療の対象にはならないと覚えておいたほうがいいと思います。保険料が安いので付けておいて問題はないですが、過度な期待はしないほうがいいですね。

新しいがん保険への見直しについて

ここまでの話の流れから、がん治療が入院から通院に変化してきていることがわかったと思います。10年以上前のがん保険の場合、通院治療の保障が充分でない商品が多いので、健康状態に問題がなく、新しいがん保険に加入できるのであれば、見直したいと思う人も多いと思います。ただ、保険会社が勧めてくる見直し案を100%信じるのも危険です。どさくさに紛れて、診断給付金の給付条件が改悪されていたりすることもあります。僕がいままで見たことがあるのは、上皮内新生物の診断給付金が前の商品では普通のがんと同じ給付金でしたが、見直し後には50%になっていたとか、診断給付金の回数に制限ができたとか、手術(放射線治療を含む)をした場合の手術給付金の条件が変更となり、電磁波温熱療法が支給されないように改悪されていたことを目にしたことがあります。保険会社も商品が新しくなって、よくなったことは積極的にアピールしますが、悪くなったところはアピールされずに、超ちっさい文字で書かれていることが多いです。でも、この改悪は、がんになったことがない人の場合、見抜くのは至難の業だと思います。見直し時はしっかりデメリットを理解するか、担当者から説明してもらいましょう。

がん保険のことを誰に相談するか

一般的に加入者に利益の大きい商品は保険会社にとって利益の少ない商品になり、加入者に利益の少ない商品は保険会社にとって利益が大きくなります。言い換えると、保険の営業をしている人にメリットがある商品は、当然保険会社の利益が多い商品であり、保険会社が儲かる商品を売るほど、インセンティブが多くつき、営業社員の収入が増えます。そのため、保険の営業社員の利益と保険加入者の利益が一致しない場合が多いことになります。だから、営業担当者の言うことを素直に信じないほうがいいと思います。
じゃあ、たくさんの会社の商品を扱っている街の保険屋さんで選べばいいのではないか?と思うかもしれませんが、その街の保険屋さんでも、販売員は歩合給となっており、どの会社のどのがん保険を売るかによってインセンティブが異なり、よりインセンティブが高い保険会社の商品を勧めてくる可能性が高いので、完全に勧められるものをお任せで選ぶというのも危険です。ただ、多くの会社の商品を扱っているので、いろいろな会社のがん保険の情報収集にはもってこいだと思います。また、たくさんの会社の商品を扱っている複数の街の保険屋さんで話を聞くこともいいと思います。契約するときは、ある程度の知識を身につけてからにしましょう。
ファイナンシャルプランナーや税理士、社会保険労務士などのプロに相談すればいいのではないか?と思う人もいるかもしれません。保険の相談を受けているこれらの専門家は、保険会社と代理店契約を結んでいることも多く、ある特定の保険会社の商品を勧めてくる可能性があります。代理店契約をしていると、その保険会社の商品を販売すると、保険会社よりキックバックをもらえる仕組みになっております。
となると、ほんとに信頼できるのは、保険に詳しい利害関係のない人だけになってしまいますが、そのような知り合いはいない方が多いですよね。保険も金融商品になりますので、自分の知識を増やし、自分で納得した商品を選ぶしか方法はないのかもしれませんね。僕は保険の営業成績トップとかいう人は信用してはいけない人間だと勝手に思っております(笑)。いやー世知辛い世の中ですね。

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』

『おはよう、おやすみ、また明日。』第1話より

漫画「おはよう、おやすみ、また明日。」はこちらから。

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