#8 傷病手当金について | Souffle(スーフル)
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コラム 2024.05.20

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』清水公一 「がん」でかかるお金のリアルがわかる!

#8 傷病手当金について

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』清水公一

肺がんサバイバーの社会保険労務士・清水公一さんによる、「がん」についてのお金のコラム。

がんになって会社を休む場合は、基本的に私傷病になります(一部アスベスト暴露による中皮腫や肺がん、有機溶剤暴露による胆管がんは労災が認められます)。私傷病において長期間会社を休む場合、給与が支給されればいいですが、民間企業の場合は給与が支給されない企業のほうが多いと思います。ちなみに正規で働いている公務員の場合、給与満額の病気休暇が90日、給与8割の休職が1年、その後は共済組合から傷病手当金が1年6か月、傷病手当金附加金が6か月の計2年間、給与の約3分2が支給されます。このコラムにおいて、ことあるごとに公務員の例を出しますが、別に悪口を言っている訳ではなく、単純に羨ましいなぁ〜っと思っているだけですよ(笑)。民間企業の場合、給与が出ない休職期間は傷病手当金が1年6か月間支給されることになります。今回から2回にわたり休職期間の所得保障の柱になる傷病手当金について書こうと思います。

傷病手当金とは

がんで会社を休んで給与が支給されないときや給与が減額された場合に、給与の約3分の2が健康保険(協会けんぽ又は健康保険組合)より支給されるのが傷病手当金です。傷病手当金は健康保険の被保険者にのみ支給され、被扶養者には支給されません。実際の申請は会社を経由して手続きをするので、会社から傷病手当金をもらっていると勘違いしている方がたまにいますが、これは健康保険から支給されているもので、保険料を払っていた労働者が働けなくなった場合に1年6か月間、もらうことができる労働者の正当な権利です。なので、会社に申し訳ないとか、会社に必要以上に感謝をする必要はまったくないです。

令和4年1月に法律改正があって、それまでは支給期間が支給開始日から1年6か月でしたが、法律改正後は支給期間が通算して1年6か月となりました。

出典:全国健康保険協会ホームページ

出典:全国健康保険協会ホームページ

この改正には経過措置がありまして、令和4年1月1日の時点で傷病手当金を受給できる権利があれば、通算1年6か月が適用されることになります。つまり、令和2年7月2日以降に傷病手当金を受給開始したのであれば、この改正が適用になり、支給開始後に一時的に出勤した場合、その期間を除いて通算1年6か月まで受給することができます。

この改正には、がん患者団体の働きかけが大きかったと聞いております。治療と仕事の両立に大きな影響を与える改正になったと感じており、先人の皆様の活動に感謝ですね。

傷病手当金をもらうためには

傷病手当金は下記の4つの要件を満たすと、健康保険から被保険者に支給されます。

(1):業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
(2):仕事に就くことができないこと
(3):連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(3日間の待機期間が必要)
(4):休業した期間について給与の支払いがないこと(一部給与の支払いがあった場合はその分は支給されない)

出典:全国健康保険協会ホームページ

出典:全国健康保険協会ホームページ

ちなみに、この待機期間には労務不能となった後の会社の公休日や年次有給休暇の日も含まれます。例えば、労務不能直後に3連休があった場合や労務不能により有給を取得してそのまま休職した場合にも待機期間を満たしたことになります。

休職の条件として有給をすべて消化してからでないと休職できない規程になっている会社もありますが、有給を残したまま休職に入ることができる規程の会社もあります。個人的にはある程度の日数の有給は残して休職したほうが、復職したときに有給が使えるのでいいのかなぁっと思います。ちなみに、傷病手当金より有給休暇のほうが金額が多いですが、休職期間中は労働を免除をされているので、有給休暇を使用することはできません。

傷病手当金の金額について

傷病手当金の金額ですが、先程、給与の約3分の2と書きましたが、1日あたりの具体的な支給額の計算方法は下記になります。

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』

健康保険の被保険者期間が12か月に満たない場合は、以下のいずれかの低い金額を算定します。
・当該被保険者の被保険者期間における標準報酬月額の平均額
・当該被保険者の属する保険の全被保険者の標準報酬月額の平均額

各健康保険によって全被保険者の標準報酬月額の平均額は異なりますが、令和4年9月30日時点での協会けんぽの標準報酬月額の平均は約30万円となります。

*1:標準報酬月額とは、1か月あたりの給与を1等級~50等級までに区分したもので、主に健康保険料や厚生年金保険料を計算するときに使用されます。基本的には年に1回決定するものですが、給与が大きく変動した場合はその都度、改定されるものです。

標準報酬月額という言葉は耳慣れないものだと思いますが、もらっている給与が多いほど、傷病手当金の日額も多くなります。上記の計算により、傷病手当金の日額を決定しますが、支給開始時に決定された日額は、その後に復職して給与の変動があっても、同一傷病で傷病手当金を受給している1年6か月間は変わらないです。労務不能と認められた日ごとに、傷病手当金が支給されますが、実際の支給は事後請求となり、医師の労務不能の意見書をもとに健康保険が支給を決定しますが、傷病手当金の請求書を会社に提出してから実際の支給までは2〜3か月かかります。ちなみに労務不能の医師意見書を書いてもらう場合、保険が適用されます。1000円の3割負担なので300円になります。なので、文書代はそれほど気にしなくても大丈夫だと思います。基本的には月に1回の請求となりますが、3か月に1回の請求でも対応してくれる健康保険もあったりしますので、もし、請求書を毎月書くのが面倒であれば、健康保険に相談してみてください。

給与の一部だけ支給されている場合

傷病手当金は病気やけがの治療のために働けない場合に、その間の生活を保障し、早期回復を図る制度です。ですから、たとえ給料等をもらっていても、その額が傷病手当金より少ないときは、その差額が支給されます。例えば、休職中であっても給与の50%を支給することを就業規則で定めている場合は、1日ごとに傷病手当金日額から給与の50%を引いた金額を傷病手当金として支給されます。

今回は傷病手当金をもらうための4つの要件を中心にお伝えしましたが、次回は実際に傷病手当金を申請する際に注意するポイントや、会社を辞めた後に傷病手当金の継続給付を受給するときに注意する点について書きたいと思います。

『おはよう、おやすみ、また明日。』第4話より

『おはよう、おやすみ、また明日。』第4話より

参考資料:全国健康保険協会ホームページ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/

漫画「おはよう、おやすみ、また明日。」はこちら▶▶

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