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コラム 2019.09.10

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#46 SNSには正義の味方がたくさんいます

SNSには「正義の味方」がたくさんいます。その正体は?

ほがらかSNSライフもはや正義の心など捨てた方が良いのではないか。

別に悪に染まれと言っているわけではない、俺たちが染まるのは紅だけだ。

そしてこれはSNS、主にツイッター上での話である。

先日から連日あおり運転のニュースが放送され、犯人も同乗者も無事逮捕されたのだが、その裏で全く関係ない人が「この女が同乗者、早く自首をしろ」という内容で、何と実名を拡散されてしまったのだ。

被害者はデマを流した者はもちろん、それをリツイート、引用したものも対象に法的措置を取る考えだという。

被害者が被った実害からすれば、訴訟もやむなしである。

また、こういうことをすると「最悪逮捕まである」ということを周知していかないと、いつまでたっても「ネットの匿名性」に全幅の信頼を寄せている人が気軽にこういうことをしてしまう。

これだけ暑いのに、外を全裸で歩いている人があまりいないのも「裸で外にでるとお縄になる」ということが広く知られているからである。

知らなかったら、割とみんな全裸で外に出てしまうはずだ。

しかし、このデマ、悪意や愉快犯なら論外であるが、純粋な「早く犯人が捕まりますように」という「正義」で行われた可能性はゼロではない。

少なくともリツイートや引用をした人の中には善行のつもりでやった人もいると思う。

まさに「良かれと思ってポリス沙汰」だ。

ツイッターでは「正義の人問題」がたびたび取りざたされる。

正義の人とは「何かやらかした人」を正義の名の元にネット上でフルボッコにしようとする人のことである。

やらかした人が悪いことをしたのは事実なので、周囲も「叩かれるのは仕方ない」と正義の人を応援しがちだ。

しかしそれが最終的に「これリンチじゃない?」「ハンバーグ!!!(殴られている人が)」という「やりすぎ」に発展することが問題視されている。

そして今回は「早く犯人捕まれ」という正義側で発信されたことが、誤りだったことにより、正義が罰せられることになったのだ。

このようにネットでの正義は他者にはもちろん、己にも危険なのである。

正義というのは、いわば悪への怒り、そして憎しみである。その両者は、著しく人の冷静さと判断力を奪う。

怒りすぎて逆に各国首脳のような顔になってしまう時もあるが、その規模の怒りは私で言うと担当への怒りぐらいである。

早く犯人が逮捕されてほしいという正義の心が、冷静さを失わせ、犯人かどうかも定かでない人間の個人情報を拡散させたならというなら、正義の心などない方がいろんな意味で「安全」である。

それに人は悪行をするときはためらいがあるが、善行と思っているときは躊躇がない。

よって悪い意味での「善は急げ」で、拡散してはいけないものを事実確認なしでしてしまったりするのだ。

そもそも、善行をしたくてツイッターをはじめたという人はそんなに多くはないだろう。

わざわざ人様に話すことでもない、クソみたいなことを書く場が欲しい、みたいな志の低さか、そもそも「理由なんかない」ぐらいで始めた人も多いはずだ。

ならば、真偽不明の正義に賛同も否定もすることなく、危なそうなものは見て見ぬふりの志の低い「モブキャラ」として振舞ったって別に問題ないはずである。

次回は9月17日更新です。

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