SNSと違法薬物の怖いお話|ほがらかSNSライフ第60回|カレー沢薫 | Souffle(スーフル)
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コラム 2019.12.17

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#60 SNSと違法薬物の怖いお話

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

SNSはガンジス河。違法薬物だって何だって流れてきます。

ほがらかSNSライフご存じの通り空前の違法薬物ブームである。

薬物というより薬物で逮捕されるのが流行っているのだが、逮捕されるのは使用者や所持者のごく一部である。

よって、おクスリ自体はもっと流行っていると考えた方が良いだろう。

メディアでも再三、おクスリの誘惑はどこにでも潜んでいる、他人事と思わず気をつけよう、と言われているが、それでも実感がわかないのが正直なところである。

もちろん、薬物というのはクラブや、BLで受けが良く引きずり込まれている路地裏のように、いかにも怪しい場所でだけ扱われているもの、などと思っているわけではない。

しかし、私などクラブはおろか、部屋から出ない上に、BLの受けでもないので、庭にビッグ麻が自生していない限り大丈夫、となかなか当事者意識を持つことが出来ない。

しかし、薬物の誘惑は家の外にある、という考え自体が紀元前なのだ。

青い鳥と乱交パーティ、そしておクスリは、気づかないだけですぐ近くにあるものなのである。

私の部屋に大麻が自生している、というわけではない。

確かに私の部屋の床は腐っているが、まだ草が生えるまでには至っていない。

もうわかっていると思うが、薬物の誘惑は当然インターネットにもある。

関係ないどころか、スマホを持っている時点で「薬物(への入り口)を所持している」と言っても過言ではない。

自分はそんなアングラなサイトは見ない、エロですら安心安全のFANZAを使っているから大丈夫という人は、むしろ油断しすぎていて危ない。

クラブや攻めが住んでいる路地裏にしかクスリが存在しないわけではないように、ネット上でもクスリはいかにもアングラなところで取引されているわけではない。

もっと身近なところ、ご存じツイッターなどの「SNS」でも薬物の取引は行われているのだ。

つまり、ツイッターを一日68時間やっている私は、薬物から遠いどころか世界一近くにいると言っても過言ではない。

最近、鍵さえかけずに「野菜手押します」などと堂々と書き込むアカウントたちがあると話題になった。

もちろん、お野菜をリヤカー販売しているという意味ではない。

確かにそういう怪しい人もいるが、少なくとも売っているものは合法だ。

野菜は大麻、手押しは手渡しの隠語である、ちなみにシャブは「アイス」だ。

「アイスの手押し」と書いてあっても、秋田にいるアイスを売っているババアのことではない。

さらには「リツイートで野菜プレゼント」というように新鮮な感想お野菜の写真付きプレゼント企画までやっているという。

もちろん、そんなことをオープンな場でやっていたらすぐ摘発されてしまうので、これらのアカウントは「バカッター」として扱われているが、笑いごとではない。

何故なら、我々は「リツイートしたら100万あげる」と言われたら、とりあえずリツイートしてしまうぐらい迂闊なのである。

お野菜だってリツイートであげると言われたら、とりあえずリツイートする可能性は大いにあるはずだ。

どんなに意志が強い人でも、机にずっと謎のボタンがあったら、いつか興味本位で押してしまうだろう。

このように意志よりも、いつでも気軽に入れる「入口」が近くにあることの方が問題であり、危険なのだ。

ともかくネットでも現実でも「入口」は自分のすぐ近くにある、と思うしかない。

こんな所にあるはずがないと思うからノックもせずに入ってしまうのだ。

青い鳥、乱交パーティ、違法薬物は遠い世界ではなく、隣の部屋にある、そう自覚することが大事である。

次回は12月24日更新です。

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OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

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