インターネットに匿名性などなく、不用意に他人を貶めるようなことを書くと、あっという間に個人を特定され、法的に訴えられることもあると、さすがに周知されてもいいような気もするが、今日も電子の海では安易な誹謗中傷が繰り返され、その上空を情報開示請求が飛び交っている。
「未就学児でも許さん」でおなじみのネット民だが、それでも相手がリアルキッズや先日まで小児科に通っていたタイプであればまだ情状酌量の余地がある。
しかし、いざ訴えると「自分にも家族があるんです」と、いい大人が泣きを入れてくるケースもあるという。
このようにカジュアルにネット上の誹謗中傷が訴えられる世の中になったように見えるが、意外と訴訟まで行くケースはそこまでないそうだ。
何故なら、家庭持ちのいい大人が自分の娘と大して変わらないジュニアアイドルに粘着していたという惨劇ケースもあるが、誹謗中傷をするのは世間のイメージ通り、金も職も人望もなくネットで人を叩くのが唯一の楽しみという無敵の人率が高いのだ。
よって訴訟して勝ったとしても本人に支払い能力がなく、弁護士費用と併せて赤になる可能性が高いため、断念する人も多いのだ。
逆に言えば、それでも訴える人は「金の問題じゃねえ」という、別の意味で無敵の人になっており、そんな人に今更家族がいるなどと詫びたとて、その命乞いが相手の気分を盛り上げるBGMになるだけである。
ただ、最低限の常識さえあれば、普通はネット上のいざこざで訴えられるなどということはそうそうないので、そこまで恐れてSNSなどをやることはない。
むしろ、先ほどから他人事のように言っている私の方が訴訟リスクは高いのである。
これに気づいたのはつい最近のことだ。
同じく文筆業をしている人が「我々は間違ったことを書くことで訴えられる可能性がある」と言っているのを聞いて、初めて気づいたのである。
いかに訴えられる人間が、自分が訴えられることなど1ミリも想像せずにお気持ちを書き散らしてしまっているかがよくわかる話だ。
ただ文筆業はそれが出版されたり、広く拡散される可能性が高いため、余計訴訟リスクが高くなるというだけで、無名なら何を書いても大丈夫ということはもちろんない、むしろこんな無名アカの言うことなど誰も気にしないだろうという油断から、一躍有名人になってしまうパターンも多い。
そしてその人から、そういった訴訟リスクに備えた保険も存在すると教えてもらった。
損害賠償金を保障する保険ではない、まっとうな保険会社であれば度々訴訟を起こされて負けるタイプとは契約しないはずだ。
敗戦処理費用ではなく、戦うための「弁護士費用」を保障する保険のようだ。
これなら、訴えられた時だけでなく、訴えたい時にも利用することができるので、誹謗中傷された時でも安心である。
しかし、日本人は2人に1人はがんになると言われていても、がん保険に入るか否かは迷うところだ、まして弁護士費用保険に入っている一般人は相当レアだろう。
文筆業をしている私ですら「センテンススプリングをリスペクトした作風に変える」など、大胆なイメチェン予定がなければ入らないと思う。
逆にどういう人が入っているのか気になるが、保険で訴訟に備えるより、まず訴訟に備えなくていい人生を歩んでいきたい。
次回は4月9日更新です。
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