過去の言動に足を引っ張られないために| ほがらかSNSライフ| カレー沢薫| Souffle(スーフル)
公式Twitter 公式Instagram RSS
Souffle(スーフル) Souffle(スーフル) 息、できてる?
コラム 2021.08.10

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#146 過去の言動に足を引っ張られないために

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

新たな脅威・キャンセルカルチャーって何?

『ほがらかSNSライフ』開会直前にオリンピックに関係した者が次々に消えるという不思議な現象が起こった。

そしてオカルト専門家により、この怪現象は「キャンセルカルチャー」という妖怪の仕業ではないか、と分析されている。

キャンセルカルチャーとは、ここぞという時、過去のアレな言動を掘られて失脚させられることを指す。
過去は消せない、そしてネット民の「昔のことだろうが関係ない」という他人への異様な厳しさを利用した巧みな攻撃方法である。
確かに過去の悪事が野放しになっているというなら「昔のこと」は通用しない、今からでも断罪すべきだろう。

しかしキャンセルカルチャーの怖いところは、放火殺人は30年後も変わらず放火殺人だろうが、今の合法が30年後違法になっているケースもある、という点である。

例えば私はツイッターや各媒体で「好きな食べ物はパスタと水道水、パブロソです、毎日ヤッてます」と何回も書いているが、もしこの中の一つでも今後違法になれば、それはもう立派なキャンセルカルチャー砲になってしまうのだ。

また、思想も何が正しいかは時代によって変わる。
「今は多様化社会であり男女同権であるべき」のような、クラスに一人はいる意識高い系小学5年生みたいな発言も、今は正しいものであり、いくらつぶやいても全くリツイートされないだけで怒られたりはしない。

しかし、将来「おキャット様の前では男女共に風の前の鼻毛に同じであり、人間の権利主張などとんでもない」みたいな世界観になったら上記の発言はと恐ろしい危険思想として炎上してしまうのである。
そして火を見て興奮状態になった人間には「昔はこの考え方が普通だった」という釈明は通じない場合が多いのだ。

よってキャンセルカルチャーされないように、言動に気をつけようと思っても、将来何がヤバい言動になっているかわからないため、防ぎようがないのである。

できることと言ったら、今ヤバいことは将来もヤバいと思ってやらないことぐらいだ。

またこのキャンセルカルチャーを食らうのは有名人だけ、というわけでもない。
今は誰でもSNSをやる時代なので、個人の発言が容易に保存されるようになってしまった。

つまり何かで脚光を浴びて、俺の人生始まったで、という時に過去のどうかしている発言が掘られて引きずり降ろされるということは十分にあるのだ。

何が「どうかしている発言」になってしまうかわからないので、気をつけようもないが、SNSをやるときは「自分の発言は記録されている」という意識を持つことは大事である。

また、人間の考え方というのは変わるのが当たり前であり、誰しも「トマトは嫌いだがケチャップはジョッキでいける」みたいな矛盾をもっているものだ。

昔と言っていることが違う、矛盾している、ということに対し皆がもっと寛容になれば、言いがかりに近いキャンセルカルチャーは起こらなくなるのではないだろうか。

次回は8月17日更新です。

次回更新が気になった方は、公式Twitterをフォローして更新情報をチェック!

前の回を読む 次の回を読む

コミックスを購入

国家の猫ムラヤマ

カレー沢薫 既刊コミックス『国家の猫ムラヤマ』

紙書籍

2XXX年、人間は絶滅しかけ、どうぶつ達が政権を握るようになった日本。投票率0%で続投決定のムラヤマ総理大臣(ツシマヤマネコ)が国を統治する!! 日本の問題点をあぶり出して燃やす、社会風刺行政ギャグ!! 時事ネタひとコマ漫画「文化庁チンアナゴ長官」も同時収録!!

他の回を読む

OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

ご感想フォーム


    『一億総SNS時代の戦略』の紙書籍を購入