#207 インターネットの戦化粧 | Souffle(スーフル)
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コラム 2022.10.25

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#207 インターネットの戦化粧

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

最新話更新!

『ほがらかSNSライフ』来週5億年ぶりに結婚式というものに出席する。

このように、数字の単位が極端過ぎるのがオタクの特徴だという。
だが個人的に、このような言い方をするのはオタクというよりインターネット言語に浸かりすぎた人な気がする。

実際どんなにオタクでも現実世界で「拙者焼肉など2兆年ぶりでござるぞ〜」と言っているのは見たことがないし、親戚のおばさんとかに「まあ、たかしちゃん大きくなったわねえ、この前会った時は1ミクロンぐらいだったのに」などと言われたら不気味すぎるだろう。

そういう言語を使うのはネットやりすぎのオタクやTwitter民だけであり、インスタの人はしないのかもしれないが、「実際より過剰に表現している」ことに関してはインスタの人も負けていないのではないだろうか。

インスタに写真を載せるときは、撮ったそのままを載せず、加工で現実より盛ったり、映えさせているのではないだろうか。
つまり、言葉で「5億倍盛ったったwww」とつぶやくか、顔に光を5億ルクス当てた写真を投稿するかの違いでしかない。

おそらくネットというのは「舞台」であり、ネット上で大げさに言ったり、写真を盛ったりするのは「メイク」なのである。
日常生活であれば「戦にでも行くのか」というぐらい濃いメイクでも、舞台上で見るとそれがちょうど良くなるのだ。
つまり、ネット上では少し大げさに言うぐらいがちょうど良いという感覚になっているということだ。

何事も大げさに書くというのはネットの悪いところでもあるが、そういう文化とも言え、ネットで話も写真も盛るな、と言うのは宝塚をナチュラルメイクにしろと言うぐらい無理がある。

ただネットを見るときは「実際より盛られていること前提」で見ることが大事である。
ネットを全てありのまま現実と思って見てしまうと、自分以外は全員過剰にキラキラした生活を送っているように見えて自分が惨めになるか、世の中には捕食者と獲物しかいないような気がして、獲物側の人間は外に出れなくなってしまう。

よって、ネット上で何かを羨ましいと感じたときは「現実はここまで良いものではない」と思うことが大事である。

逆に嫌なものを見たときは「現実はここまでひどくない」と思うようにしよう。

ただ嫌なことに関しては「現実はもっとひどい」というケースもある。
しかし、ネット情報の真偽を確かめる術はないのだから、どうせなら自分の都合の良いように解釈した方がいい。

手の届かないブドウを「どうせあのブドウは酸っぱい」と言うのは負け惜しみの例とされているが、ネットを見る時には必要な心構えである。

インスタに写っている映えたスイーツよりも、今自分の手元にあるブラックサンダーの方が美味いと思うことが大切なのだ。

次回は11月1日更新です。

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OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

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